AIプロジェクトに必要な知識

Society 5.0・開発手法・契約・提供形態
このページで学ぶこと

AIを社会で活用するために知っておくべき知識をまとめています。Society 5.0の概念、AIプロジェクトの進め方、契約の種類、AIの提供方法(クラウド・エッジ)まで、G検定で問われるポイントを図解します。

Society 5.0
Society 5.0って何?
日本政府が提唱した「超スマート社会」のビジョンです。人類の歴史を5段階で捉えたとき、AIやIoTで現実世界(フィジカル空間)とネット空間(サイバー空間)を高度に融合させた社会が5番目の段階とされています。
段階名称特徴
Society 1.0狩猟社会狩りや採集で生活
Society 2.0農耕社会農業による定住
Society 3.0工業社会産業革命・大量生産
Society 4.0情報社会コンピュータ・インターネット
Society 5.0超スマート社会AI・IoTでサイバーとフィジカルを融合
Society 5.0のポイント
BPR(業務プロセス改革)とUI/UX
AIを導入するとき、ただツールを入れればいいの?
いいえ。AIを導入する前に、業務プロセスそのものを見直すことが重要です。これをBPR(Business Process Re-engineering)と言います。既存の業務をそのままAIに置き換えるのではなく、業務の流れ自体を再設計してからAIを組み込むのが成功のカギです。
BPR(Business Process Re-engineering)
UI/UXって何?AIと関係あるの?
UI(User Interface)は「画面のデザインや操作方法」、UX(User Experience)は「ユーザーが感じる体験全体」のことです。AIがどれだけ賢くても、使いにくかったら意味がありません。AIの判断結果をユーザーにわかりやすく伝える設計がとても重要です。
UI(ユーザーインターフェース)
  • 画面のレイアウト、ボタン配置
  • フォントや色使い
  • 操作の導線設計
  • 見た目と操作方法
UX(ユーザーエクスペリエンス)
  • 使いやすさ・快適さ
  • 目的達成までのスムーズさ
  • 満足感・信頼感
  • 体験全体の質
AIプロジェクトの進め方
AIプロジェクトって、普通のシステム開発と同じ流れで進めるの?
大きく違います。通常のシステム開発は「仕様を決めて→作って→納品」という流れですが、AIはやってみないと精度が出るかわからないのが最大の特徴です。そこで、経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」では探索的段階型という開発方式を推奨しています。
AI・データの利用に関する契約ガイドライン
探索的段階型の開発プロセス
「探索的段階型」とは、AIプロジェクトを複数のフェーズに分けて、各段階で成果を確認しながら進める方法です。各段階の間に「次に進むか、やめるか」の判断ポイントがあります。
アセスメント 課題整理・実現可能性 PoC(概念実証) 小規模で精度を検証 開発 本格的なシステム構築 追加学習 運用後のモデル更新 運用 本番稼働 判断 Go / No-Go 判断 Go / No-Go 判断 Go / No-Go 準委任契約 準委任契約 請負契約 準委任契約 ● 準委任契約 = 作業の遂行が目的(成果物の完成義務なし) ● 請負契約 = 成果物の完成が目的(完成義務あり)
PoC(Proof of Concept:概念実証)
PoCって何のためにやるの?
AIは「作ってみないと精度が出るかわからない」ので、本格開発の前に小規模で試して実現可能性を検証する段階がPoCです。ここで「使えそう」と判断できたら本開発に進み、「ダメそう」なら早期撤退できます。いきなり大きな投資をするリスクを減らすのが目的です。
PoCで確認すること
PoC貧乏(PoC疲れ)に注意

PoCばかり繰り返して本開発に進めない状態を「PoC貧乏」「PoC疲れ」と言います。PoCの目的と成功基準を事前に明確にしておくことが重要です。

追加学習
AIモデルは一回作ったら終わり?
いいえ。AIモデルは運用開始後も定期的にモデルを更新する必要があります。これを追加学習と言います。世の中のデータは時間とともに変化するので(トレンドの変化、季節変動など)、古いモデルのまま放置すると精度がどんどん下がります。
追加学習が必要な理由
開発手法:ウォーターフォール vs アジャイル
AIプロジェクトはどんな開発手法を使うの?
ソフトウェア開発の手法には大きくウォーターフォール型アジャイル型があります。AIプロジェクトは試行錯誤が多いので、アジャイル型や探索的段階型が向いています。
ウォーターフォール型
  • 要件定義→設計→実装→テスト→納品の一方通行
  • 各工程が完了してから次へ進む
  • 仕様が明確なシステム開発に向く
  • AI開発にはやや不向き(精度が保証できない)
アジャイル型
  • 短い周期(スプリント)で繰り返し開発
  • 動くものを早く作って改善を繰り返す
  • 変更・修正に柔軟に対応
  • AI開発と相性が良い(試行錯誤を反映しやすい)
AI開発の契約形態
AI開発の契約ってどんな種類があるの?
AI開発では主に3種類の契約が出てきます。最も大事なのは準委任契約と請負契約の違いです。AIは精度保証が難しいため、PoCやアセスメントの段階では「成果物の完成義務がない」準委任契約が適しています。
契約種類義務内容AIプロジェクトでの使用場面
NDA(秘密保持契約) 機密保持 プロジェクトで知りえた情報を外部に漏らさない約束 最初に締結。データや技術情報の保護
準委任契約 善管注意義務
(作業の遂行)
「やってみる」義務はあるが、完成義務はない アセスメント・PoC・追加学習
(精度保証が難しい段階)
請負契約 完成義務 成果物を完成させて納品する義務がある 本格開発
(仕様が確定した段階)
G検定の頻出ポイント

PoCの段階は準委任契約が推奨されます。理由は「AIの精度は事前に保証できない=成果物の完成を約束できない」からです。本格開発(システム構築)に進んで仕様が固まったら、請負契約に切り替えます。

AIの提供方法
AIを使う方法にはどんな選択肢があるの?
大きく分けてクラウド型オンプレミス型、そしてエッジAIの3つがあります。それぞれメリット・デメリットが異なるので、用途に合わせて選びます。
クラウドサービスの3層モデル
IaaS Infrastructure as a Service サーバー・ネットワークを提供 PaaS Platform as a Service 開発環境・ミドルウェアも提供 SaaS Software as a Service 完成したソフトウェアを提供 ユーザーの管理範囲 広い ← → 狭い 例: AWS EC2, GCP Compute 例: AWS SageMaker, GCP AI Platform 例: Gmail, Salesforce
種類提供されるものユーザーがやることAI関連の例
IaaS サーバー、ストレージ、ネットワーク OS・ミドルウェア・アプリの構築すべて GPU付き仮想マシン(AWS EC2 P3等)
PaaS 上記 + OS・開発環境・ミドルウェア アプリケーションの開発のみ AWS SageMaker、Google AI Platform
SaaS 上記 + 完成したアプリケーション そのまま使うだけ ChatGPT、Google翻訳
Cloud AI API
Cloud AI APIって何?
クラウド事業者が提供する学習済みAIをAPI経由で呼び出せるサービスです。自分でモデルを作らなくても、画像認識・音声認識・翻訳などの高精度なAI機能をすぐに使えます。SaaSに近い手軽さで、高度なAI機能を利用できるのが特徴です。
Cloud AI APIの例
オンプレミス vs クラウド
クラウド
  • インターネット経由でサーバーを利用
  • 初期コストが低い(従量課金)
  • スケーラビリティが高い(すぐに拡張可能)
  • データが外部に出る→セキュリティに注意
オンプレミス
  • 自社内にサーバーを設置して運用
  • 初期コストが高い(機器購入が必要)
  • データを外部に出さない→セキュリティに強い
  • 機密性の高いデータを扱う場合に適する
エッジAI / エッジコンピューティング
エッジAIって、クラウドAIと何が違うの?
クラウドAIはデータをサーバーに送って処理しますが、エッジAIデータが発生する現場(端末側)でAI処理を行う方法です。スマホ、カメラ、工場のセンサーなど、データの「端っこ(エッジ)」で直接処理します。
クラウドAI
  • データをサーバーに送って処理
  • 高い計算能力で複雑な処理が可能
  • ネットワーク遅延がある
  • 通信コストがかかる
エッジAI
  • データが発生した現場で処理
  • 超低遅延(リアルタイム処理が可能)
  • 通信不要→プライバシー保護に有利
  • 計算能力に制約→軽量モデルが必要
エッジAIの活用例
G検定キーポイントまとめ